
緑内障の治療では、眼圧を下げ、視野障害の進行を抑えることが重要です。
当院では眼圧を下げる効果が大きいため、手術適応がある場合には手術をご提案しています。
一方で、現時点では手術はまだ早い方には点眼治療をベースとしていますが、眼の状態や点眼の効果によっては、レーザー治療をご提案する場合があります。
では、どのタイミングでレーザー治療を検討するべきなのか。
開放隅角緑内障の治療の選択肢のひとつであるSLT(選択的レーザー繊維柱帯形成術)について、点眼治療との違いを踏まえて解説します。
SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)とは
SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)は、房水の排出経路でフィルターの役割を果たしている“線維柱帯”にレーザーを照射し、房水の流れを改善する治療です。
房水は眼球を満たしている透明な液体で、常に産生・排出され、そのバランスによって眼圧が一定に保たれています。フィルターの役割をしている線維柱帯が目詰まりを起こすと、房水の流れが悪くなり眼圧が上昇します。
この線維柱帯に微弱なパワーのレーザーを当てると、フィルターの目詰まりが解消され、房水の流れが良くなります。これがSLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)です。
この治療で用いられるレーザーは微弱なため、侵襲(体の組織へのダメージ)がほとんど無いとされており、数年に1度繰り返し治療を受けられる方もいらっしゃいます。
SLTの効果について
SLTの有効性については、これまでにもさまざまな研究で検討されています。
世界的に権威のある医学誌『The Lancet』に2019年に掲載された研究では、
SLTを初期治療で受けた患者さんのうち、3年間、目標眼圧を維持するための点眼薬を必要せず経過した患者さんが74.2%にのぼったと報告されています。
このように、SLTは眼圧を下げるだけでなく、点眼薬の使用量や点眼による負担を減らす選択肢としても検討されています。
当院におけるSLTの位置づけ
当院では、緑内障手術の適応がある患者さまには、手術を基本的な治療方針としてご提案しています。
一方で、現時点では手術適応がないと判断される場合や、手術以外の方法で眼圧をコントロールすることが適切と考えられる場合には、点眼治療に加えてSLTを選択肢としてご提案することがあります。
SLTは、手術の代わりに行うものではなく、手術適応に至らない段階での治療選択肢の一つ、または点眼治療の負担を軽くするための選択肢として位置づけています。
SLT治療を検討するタイミング
一つの目安となるのは、「毎日の点眼が難しいかどうか」です。
具体的には、次のような方がSLT治療を検討されることがあります。
- 毎日の点眼を忘れてしまうことが多い方
- 点眼治療の副作用でお困りの方(アレルギー、充血、まぶたの色素沈着など)
- 妊娠中など、点眼治療ができない方方
特に初期の緑内障治療の場合では、自覚症状がほとんどないため、
病気そのものによる生活の不便さが少ない一方、「点眼治療による負担」が問題になることがあります。
SLTは比較的侵襲が少なく、安全性が高い治療法であるため、
日常生活で点眼負担を軽減する選択として検討されることが増えています。
SLT治療のメリットとデメリット
【メリット】
・点眼治療に比べて、日常的な治療の負担を減らせる可能性がある
・処置の痛みがほぼ無い
・外来で日帰り治療が可能
・効果が低下した場合は再度照射が可能
【デメリット】
・緑内障のタイプによっては適応しない場合がある
・すべての方に同様の効果が得られるわけではない
・効果の持続期間には個人差がある
まとめ
緑内障の治療は視力を向上させるものではなく、視野障害の進行を抑えることを目的としています。
手術やSLTなど、点眼以外の治療法を検討する際は、以下の2つの軸で考えると分かりやすくなります。
・緑内障の進行リスク(将来の視機能を守るために、治療がどの程度必要か)
・日常生活での治療の負担(点眼の手間や副作用、費用など)
これらを踏まえ、検査結果やリスク、ご自身にとって無理なく治療が続けられるかを踏まえながら、医師と相談し、生活スタイルに合った治療を選択していくことが重要です。
当院では、病気の進行度、眼圧の状態、生活への影響などを丁寧に考慮しながら、最適な手術をご提案します。
手術やレーザー治療に対する不安や疑問がある場合も、どうぞお気軽にご相談ください。
