- HOME>
- 近視・遠視・乱視について
目の構造と屈折異常
目は人体の中でも非常に精密な器官であり、その機能はしばしば高性能カメラに例えられます。私たちの視覚は角膜と水晶体という光学的な部品によって支えられており、これらはレンズのように機能して光を網膜に集中させることで、物体をはっきりと見ることを可能にしています。
水晶体の厚みは毛様体筋と呼ばれる小さな筋肉によって調節され、これにより「調節力」が生まれ、さまざまな距離にある物体に焦点を合わせることができます。正常な視力を持つ人(正視)は、調節力を使わなくても遠くの光が網膜に正確に焦点を合わせられ、遠近両方をしっかり見ることができます。
しかし、焦点が網膜の前後にずれてしまうと、近視や遠視といった状態が生じ、視界がぼやけて見えるようになります。これらの状態を総称して「屈折異常」と呼びます。
屈折異常の種類と特徴
近視

近視は最も一般的な屈折異常の一つで、遠くの物体がぼやけて見える状態です。この症状は、光線が網膜の前で焦点を結んでしまうことで発生します。近視の方は近くの物ははっきり見えるため、読書やデスクワークなどの近距離作業には通常支障がありません。
近視の主な原因としては、眼球が前後方向に長すぎる「軸性近視」と、角膜や水晶体の屈折力が強すぎる「屈折性近視」があります。特に現代社会では、デジタルデバイスの長時間使用や近距離作業の増加により、若年層の近視が世界的に増加傾向にあります。
遠視
遠視は、光線が網膜よりも後ろで焦点を結ぶ状態です。この状態では、遠くの物も近くの物もぼやけて見える可能性があります。
特に注目すべき点として、子供の場合は調節力が非常に強いため、自身の調節力を最大限に使って焦点を合わせることができることがあります。そのため、視力検査で問題が検出されないことがあり、視力の問題が見逃されることがあります。
長時間の読書や細かい作業をおこなった後に頭痛や眼精疲労を感じる場合は、潜在的な遠視の可能性があります。このような症状がある場合は、専門医による適切な検査が重要です。
乱視
乱視は、角膜や水晶体の形状が均一でなく歪んでいることによって生じる屈折異常です。理想的な形状(完全な球面)であれば発生しないため、主に物理的な歪みが原因です。
乱視がある場合、光が一点に集中せず複数の焦点に分散するため、あらゆる距離の物体がぼやけて見えることがあります。また、直線が歪んで見えたり、光源の周りにハローが見えたりすることもあります。
乱視は単独で発生することもありますが、多くの場合は近視や遠視と併存しています。
この複合的な屈折異常は、適切な検査と矯正が特に重要です。
近視・遠視・乱視の診断方法
近視、遠視、乱視の正確な診断には、眼科医による専門的な検査が必要です。
近視、遠視、乱視の検査
視力検査 | 標準的なスネレン視力表を使用した視力測定 |
---|---|
屈折検査 | 検眼レンズを使用して最適な矯正度数を決定 |
角膜形状解析 | 角膜の形状を詳細に測定し、乱視の程度を評価 |
眼軸長測定 | 特に小児の近視進行管理に重要な検査 |
これらの検査により、患者さまお一人ひとりの視力状態を正確に把握し、最適な治療方法をご提案することが可能になります。
近視・遠視・乱視の治療
近視、遠視、乱視といった屈折異常には、さまざまな治療法があります。多くの患者さんがこれらの治療によってクリアな視界を取り戻すことが可能です。
近視の治療法
眼鏡・コンタクトレンズによる矯正
近視の最も一般的な治療法は、凹レンズを使用した眼鏡やコンタクトレンズです。これらは光を適切に拡散させ、網膜に正確にピントが合うよう調整することで視力を矯正します。
眼鏡は安全で非侵襲的な選択肢であり、日常生活で簡単に使用できる利点があります。一方、コンタクトレンズは視野が広く、スポーツや活動的なライフスタイルに適していますが、適切なケアと定期的な交換が必要です。
近視進行抑制治療
小児や若年者の近視進行を抑制するための治療法として、低濃度アトロピン点眼薬(マイオピン)が注目されています。マイオピンは、低濃度(0.01%)のアトロピン硫酸塩を含む点眼薬で、眼の調節を部分的に緩和することで近視の進行を抑制する効果があります。
臨床研究では、マイオピンの使用により近視の進行速度が30〜50%減少したという結果が報告されています。副作用も最小限で、多くの小児患者に適応可能です。就寝前に1日1回点眼するシンプルな治療法であり、当院でも小児近視の進行抑制治療として提供しています。
オルソケラトロジー
オルソケラトロジー(オルソ)は、特殊なハードコンタクトレンズを夜間装用することで角膜の形状を一時的に変化させ、日中の裸眼視力を改善する治療法です。主に就寝時にレンズを装用し、朝に外すことで、その日1日は眼鏡やコンタクトレンズなしで過ごすことができます。
この治療は特に小児の近視進行抑制効果も期待されており、定期的な検査とレンズのフィッティング調整が必要ですが、適切な対象者にとっては日中の視力矯正具が不要になるメリットがあります。角膜形状や近視の程度によって適応が異なるため、専門医による詳細な検査と相談が必要です。
遠視の治療法
遠視は、光が網膜の後ろで焦点を結ぶために起こります。治療には、光を集めて焦点を網膜に正確に合わせる凸レンズを用いた眼鏡やコンタクトレンズが使用されます。
特に小児の遠視については、適切な矯正をおこなうことで斜視や弱視といった合併症のリスクを減少させることができます。このため、小児の視力検査と早期介入は非常に重要です。
成人の遠視にも、近視と同様にレーザー屈折矯正手術が選択肢となる場合があります。ただし、年齢とともに進行する老眼(老視)との関連も考慮する必要があります。
乱視の治療法
乱視は、角膜や水晶体の不均一な形状によって起こります。このため、特定の方向に焦点がずれ、視界がぼやけることがあります。
乱視の治療には、眼鏡やコンタクトレンズが一般的に用いられます。これらは特定の方向の光の屈折を調整し、シャープな視界を提供します。特に乱視用の円柱レンズを組み込んだ眼鏡や、トーリックコンタクトレンズが効果的です。
重度の乱視や特定の条件を持つ患者さんには、近視矯正手術と同様の手法で治療することも可能です。 ただし、乱視の種類や程度によっては、完全な矯正が難しい場合もあるため、専門医による詳細な評価が重要です。
近視、遠視、乱視の予防と日常のケア
屈折異常の完全な予防は難しいものの、特に若年層の近視進行を遅らせるための方法をいくつかご紹介します。
屋外活動の増加 | 日光を浴びる時間を増やすことで、近視の進行を遅らせる効果が期待できる。 |
---|---|
適切な読書姿勢 | 読書や作業時は適切な距離と姿勢を保つ。 |
定期的な眼科検診 | 早期発見・早期対応のために定期的な検査を受ける。 |
近視、遠視、乱視は、
適切な診断と治療によって
効果的に管理することができます

当院では、最新の診断機器と治療法を用いて、患者さんお一人ひとりの生活スタイルや視力の状態に合わせたオーダーメイドの治療プランをご提供しています。視力に関する不安や疑問がありましたら、お気軽にさわだ眼科・皮膚科までご相談ください。
早期の適切な対応により、「しっかり見える」快適な生活を取り戻すことにつながります。定期的な眼科検診を通じて、あなたの大切な目を健康に保ちましょう。